第76回 全日本テニス選手権大会
寺地貴弘の約束
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シングルス決勝も大詰め、寺地は第1セットを6−4、第2セットも5−2とリードし勝利を目前にしていた。ゲームカウント40−0、あと1ポイントで決着はつく。昨日の轍は踏むまい。本村との準決勝で試合開始から10ゲーム連取したあと、強引に力でねじ伏せようとして無理を重ね、危うく逆転されるところだった。一呼吸おいて慎重にサービスポジションに入った。この時、寺地の脳裏には3年前のある約束が浮かんでいた。 1998年8月、寺地はじりじりと焼け付くような砂入り人工芝のコート上で喘いでいた。アズメディアカップ準々決勝、対戦相手はスタミナ抜群、あの増田健太郎だった。フルセットに持ち込んだものの、容赦のない増田の振り回しと真夏の太陽に焦がされて、正気を失いかけていた。けいれん寸前の右足を引きずりながら、なんとか最後まで戦ったが、終わった時にはKO負けのボクサーのように首をうなだれていた。完敗だった。プロになれば高校チャンピオンの肩書きなど、何の役にも立たないことを実感していた。テニスには勝者と敗者しかいないのだ。 この時、親子ほども歳は違うが、針金のようにやせっぽちの若者が必死にボールに喰らいついていく姿に魅せられた一人の女性がいた。彼女は軽い気持ちで「優勝したらラケット下さいね。」と冗談とも本気ともつかぬ約束をした。寺地は「分かりました。」と型通り答えた。その後彼女は、寺地の試合があればできるかぎり足を運んだ。およそ約束とは言えない他愛もない会話は次第に記憶の中から薄れていった。 3年後の、有明コロシアム.. 寺地は静かにトスを上げ渾身の力を込めてサーブを放った。石井弥起は一歩も動くことができず、寺地は雄叫びを上げコート上に倒れこんだ。起き上がって最初に駆け寄っていったところは母親ではなかった。コートサイドで応援していた一人の女性に近づき、ウィニングラケットを手渡した。この瞬間、記憶の彼方に消え去ろうとしていた小さな約束が成就された。 |
| シングルス決勝 (2001.11.11) |
寺地 貴弘 6-4, 6-2 石井 弥起
| SET | 1 | 2 | ||||||||||||||||
| GAME | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
| 石井 | 1 | 2 | 3 | 4 | 1 | 2 | ||||||||||||
| 寺地 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||||||
| シングルス準決勝 (2001.11.10) |
寺地 貴弘 6-0, 5-7, 6-3 本村 剛一
| SET | 1 | 2 | 3 | ||||||||||||||||||||||||
| GAME | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| 本村 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 1 | 2 | 3 | |||||||||||||||||
| 寺地 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ||||||||||
| シングルス準々決勝 (2001.11.9) |
寺地 貴弘 6-3, 6-2 金子 英樹
| SET | 1 | 2 | |||||||||||||||
| GAME | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
| 寺地 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |||||
| 金子 | 1 | 2 | 3 | 1 | 2 | ||||||||||||